根性旅行記特別編 贅沢旅行記 振り子電車編 2000/10/19 (宿河原〜直江津)

現在9:00。小田急線の各駅停車にのってます。なんで急行じゃないかって?
荷物がオーボエの入ったリュック、アングレケース、着替え類が入ったトランク、そして、スーツケースと、4つにもなってしまったので恐くて急行にのれなかったのよ。で、運よく座ることができたのでゆっくりかいているわけ。気を抜くと荷物が倒れるのでうっとうしい。やっぱりひとつへらすべきだったか・・・
さて、今回の旅行は貧乏旅行じゃなくって、なんと!特急を使う豪華絢爛贅沢旅行なのだ。
いつもならば各駅停車でいくところを「スーパーあずさ」にのってしまうのだ。
一般人にはわかるまい。この興奮、胸のときめきは。
振り子電車なのである。最高速度130キロなのである。スーパーなのである。
あさ8:30に家を出てちょうど一時間。新宿駅についた。さてさて、中央線のホームにGO!
げっ、もうならんでる・・・っていうのは予想通り。自由席に座りたい時は始発駅に1時間前にならぶのが常識ってところなのだが、今日はわけあって30分前にしかこられなかった。座れるだろうか。心配。
発車15分前の9:45に列車の扉が開いて乗り込み、なんとか席を確保することに成功。よかった。座れなかったら特急の意味ないもんね。
発車前のアナウンスが流れる。日本語に続いて英語でのアナウンス。
「特急だぁ!」
感動しているうちに、音もなくスーパーあずさは定刻に出発。
いやぁ、進化したねぇ、特急。
モーターの制御がインバーターになったころから発車の時のショックが無くなった気がする。抵抗制御のころは最初に「がくっ」ときて、その後数秒してから加速をはじめるって感じだったのに対し、一気に加速しちゃうこのスムーズさ。
「いいねぇ」
さて、列車は中央線を快調に走る。90キロくらいだろうか。たいして速くない。と、いうのも中央線は過密ダイヤなのであんまり速く走ると前の快速においついちゃうのだ。だから、普通の快速と同じ位のスピードで八王子まで走る。本領発揮はそのあとになるのだ。
チャイムがなって、八王子に到着するという案内が流れた。現在10:33。
八王子のホームには、自由席に乗ろうという人であふれかえっていた。当然、座ることなんてできない。新宿でもう満席になっていたのだ。この人たちには、新宿まで出て始発から乗ろうという考えはなかったのだろうか?八王子から乗っても座れると思ったのだろうか。八王子から新宿まで快速でも35分。家を出るのを2時間はやめるだけで座れる可能性が倍増するのに。
そんな要領の悪い客(実は正しいお客)を通路に詰め込むと、するすると八王子を出発。さっきよりスピードがあがったことがはっきりとわかる。いよいよ、振り子の出番である。
振り子電車を知らない人のためにちょっと説明。振り子列車とは列車がカーブに入った時に外側に働く遠心力を相殺すべく車体をカーブの内側に傾けることができる列車である(正確には車体の下側を外側に振り出してやるのだが)この機能を登載している列車はこのスーパーあずさの他に、北海道の特急のほとんど、特急しなの、オーシャンアロースーパーはくと、四国の特急のほとんど、などなど、カーブが多い路線に投入されている。
そんなハイテク登載のマニア心をくすぐる列車にいま、のっているのである。興奮しまくりなのである!
同じ路線を普通列車で走った時に比べて格段に気持ちよさがちがう。だって、速いんだもん。
この列車、相当気持ちいい走りをする。一定の速度でたんたんと走る。たまに急減速するが、それが済むと今度は急加速。
甲斐路を軽やかに走るスーパーあずさ。気分爽快だ。
あんまり気持ちよい走りをするものだから眠くなってきた。振り子電車はつぼにはまると眠気をさそう。以前、北海道のスーパー北斗にのったとき、振り子電車+気動車という心地よさ2倍にやられて、のって10分でねてしまい、気づいたら函館駅で車庫に入る寸前というのがあったので、今回は頑張って起きていようと思う。
それにしてもいい天気だ。デジカメとコンパクトカメラ両方もっているので撮影したい気分なのだが、車内からの撮影はほかのお客様の迷惑となるのでやめておこうと思う。
このスーパーあずさ、実は前にも何度かのっているのだが、以前より、スピード、乗りごこちともにアップしているのではないかと思われる。以前ならば、強制振り子の動作がぎこちないところがあって、「あぁ、振り子だ」と、わかる乗りごこちだったのだが、今回はちがう。非常にスムーズなのだ。こうやって文字を打っている
と、いつカーブにはいったのかわからないほど。技術は、すごいはやさで進歩しているのだ、と、実感する。
社内販売のお姉さんがやってきたのでほっとコーヒーを注文した。
「ミルクと砂糖は・・・?」
ときかれたのでミルクだけいただくとする。眠くなってきたのでちょうどよかった。ミルクを混ぜて、一気に流し込もう・・・と思ったのだが、熱かったので、テーブルにおいた。
珈琲をテーブルにおいた時、おもしろい発見をした。珈琲の液面がカーブに入ってもほぼ水平のままなのだ。さすが振り子電車!と、感心。
ま、強いカーブではさすがに遠心力の相殺は難しいみたいだが、小さいカーブならばうまくいくらしい。すばらしい。
きがつくといつのまにか茅野についていた。あれ?甲府はどうした?
・・・
どうやら気づかないうちに眠り、さらに起きていたようだ。おそるべし振り子電車。
茅野を過ぎると、上諏訪塩尻ときて、松本につく。
そろそろ降りる準備をしよう。
松本には12:30に到着。到着する直前の乗り換え案内で13:00に特急しなのがあることを確認。これは「振り子電車の旅にしなさい」ということだなと思ったので一度改札を出て、「しなの」の特急券を買い足すことにした。
ショック・・・
今回は、トレイン&レンタカーで切符を買っているので乗り継ぎ割引、およびトレンタ君割引がきかないとのこと。しょうがない。正規の運賃でのることにしよう。1150円、うーん・・・最初の駅で買っていれば450円だったのになぁ。あとの祭である。
特急しなの、正式には「ワイドビューしなの」も振り子電車である。383系という、さっきのっていたE351系より古いのだが、メカニズム的には最新をいっている車両である。車輪が線路に合わせて操舵する・・・
あー、マニアック!!!
こんなのはマニアだけが知っていればいいことなので省略。とにかく、JR西日本のホープ車両なのである。
さて、松本駅。乗車案内板に従って並んでいたのに止まったのははるか先・・・
何だ、この案内板は!しかも、駅ホームに直接書いてあるものとも全く違うところにとまったわけ。
何を信じて待っていればいいの?
で、乗りごこちはといえば、さっきの中央東線は複線で線形もよかったのに対して、こっちの篠井線は単線で線形が悪く分がわるいのにもかかわらず、健闘している。さすが世界で初めて振り子電車を実用化した会社が作っただけある。
乗りごこちはそんなところにして、インテリアの作りについてちょっと触れてみよう。
スーパーあずさは紫を基調とした明るい室内であったのに対して、しなのの方はほぼグレー一色のモノトーンで、無機質な感じがする。今乗っている383系の前の車種、381系の時は窓に青いブラインド(これが、手回し式でおもしろかった。ベネシアンブラインドっていう名前だったと思う)がアクセントになって明るい、いい感じの室内であったのを思うと、残念な気がする。長野オリンピックの時はこれに世界中の選手が乗ったわけなのだが、どう感じたのだろうか。きっと、がっかりしたに違いない。もしくは、逆にハイテク日本というイメージとしてとらえてもらえたかもしれない。どっちもどっちか。
姥捨を通過。前回の旅の時は普通列車だったのでスイッチバックで停車した駅である。ブラボー優等列車。ばいばい姥捨。
今回もいい天気なので眺めは最高。美しい長野県。ひっじょうにたのしい。鉄道の旅はいいね。
流れゆく景色、レールから伝わる振動、音。すべてが気持ちいい。
今回は千葉で遭遇したような非常識人がいないのでさらに感じよいのだろう。
長野には13:46に到着。ちょっと早くついたので食事しようと(予定では松本からは普通列車で長野にいく予定だった)マクドナルドに行こうと思い、次に乗る列車の時刻を調べると何かがおかしい。
事前に調べた時には14時台に快速があるはずなのだが、それがない。いったいどうしたというのだ。
よくよく調べてみたら、鉄道ファンにあるまじき行為「見間違い、勘違い」を併発し、調べ間違えていたようだということが判明。
ショック、パート2・・・
気を取り直して新たに調べると14:18発の普通列車があるようだ。その間に駅を一回でて写真を撮ってみた。
そして、マクドナルドをあきらめて五番線に重い荷物をもって移動。と、同時に、駅レンタカー事務所に15:00にはつかないことを報告。「おまちしておりまーす」と、とても感じのよい対応。気分がよくなった。
五番線には小淵沢行きがいて、それが発車したあとに直江津行きが入線してきた。
「これは妙高高原とまりますよね?」
突然背後からおばちゃんが話しかけてきた。どうやら電車をのり間違え長野まできてしまったよう。そんな気の毒なおばちゃんにとまりますよと教えてあげるとこれまた気持ちのいい感謝の言葉。
挨拶がきちんとできる人に悪い人はいない。きっとあのおばちゃんはいい人だろう。国民みんながきちんと挨拶のできる人ならどれだけいい気持ちで過ごせるか・・・
長野を出発したこの列車、千葉で飽きるほどのった115系である。あのときとぜんぜん印象がちがう。のっていて気分がいい。景色も川沿いの林をぬって走るので美
しい。のどかだ・・・
稲の収穫も終わり、これから厳しい冬を迎えるまでのほんの短いこの季節。だいすきである。もうしばらくすると木々も紅葉し、さらに美しくなるであろう。もう一度その時期にきてみたいものである。
ふと前に座った老紳士二人の会話が耳に入った。大往生の話しであった。行儀悪いとは思ったのだが、興味深くきき耳をたてる。
どうやら、知人が大往生で亡くなったという話らしい。わしらもあのように死にたい・・・そんな会話である。
私もそう思う。病気や交通事故で死ぬより、数倍、いや、数万倍そっちの方がいいと思う。死ぬまでの何十年がどんなにつらい物であったとしても、大往生で死ねればどんなに幸せか。ちょっぴり切なくなる話しであった。
その紳士たちは妙高高原で降りていった。希望通り大往生で亡くなることを祈り・・・
いのっていいのかぁ?
さて、目的地直江津はもうすぐである。
こんなに楽しい旅はひさしぶりである。やはり、特急を使うと精神的に余裕ができるからなのかどうかはわからないが、とにかく気持ちがいい、爽快な旅になった。
最初出発した頃と文体が微妙にちがうのは忘れてもらって、直江津につくのを待つとしよう。
二本木で例のスイッチバックをして、めざすは直江津、終点である。
実家があるのにもかかわらず、だれも住んでいないためちょっと寂しい、なおえつ。毎回来るたびに、自分の居場所がない、と、ブルーになってしまう、そんな土地である。
実家においてある車が車検切れなので、今回はレンタカーを借りることにした。
駅から実家までは遠く離れているのでいつもはバスを使うのだが、今回は駅で車を借りるので、その苦労がない。ちょっと高くついたが、車検切れの車に乗ってせっかくのゴールド免許に傷がつくよりましだろう。
そんなことを考えているうちに、終点直江津に到着。約7時間の楽しい旅であった。
またこのような旅がしたい、そう思う私であった。


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旅行データ

運賃 宿河原〜直江津〜宿河原(企画乗車券):8150円
特急券 新宿〜松本:2320円 松本〜長野:1150円
駅レンタカー 3日分 Sクラス 19950円