レ・ミゼラブル

2001年2月15日 13:00開演
キャスト(主な出演者のみ)
ジャン・バルジャン  鹿賀 丈史
ジャベール      鈴木 綜馬
エポニーヌ      島田 歌穂
ファンテーヌ     鈴木ほのか
コゼット       tohko
マリウス       津田 英佑
テナルディエ     徳井 優
テナルディエの妻   大浦みずき
アンジョルラス    今 拓哉                   
実は、本当は今日の公演に行く予定は全くなかった訳なのだが、2月9日分のエッセイを書いていたら(2月14日の夜から朝にかけて書いていた)どうしても鈴木綜馬さんのジャベールが見たくなってしまい、いてもたってもいられなくなって、まず、帝劇に当日券があるかを聞いて、あることを確認し、10時には家を出発し、帝劇の窓口に並んでしまったというまさに衝動観劇。
運良く、昼の部のB席が取れたうえ、夜の部の立ち見席のチケットまでとれて、万々歳。思い立ったが吉日とはよく言ったものだ(意味違う?)関東に住んでいてよかった。

さて、今日の公演はマチネで鈴木綜馬さん、ソワレで堀内敬子さんと斎藤晴彦さんを初めてみることになる。
つまり、千秋楽で滝田栄さんを見ることによってプリンシパルは全員見ることができるということに。
ホントに今日は衝動で来てしまったわけだが、来てよかったと思った。お金なくなっちゃったけど・・・
今日のファンテーヌは前回勘違いして1幕がもったいなかった、鈴木ほのかさん。やっと聞ける。CDで聞く限りとてもきれいな声なので、とっても楽しみ。レ・ミゼラブルのサイトでは演技も評判がいいのでじっくりみるとしよう。

まだ開演まで時間があったので一度銀座方面まで散歩に行って腹ごしらえをして、帰ってくるとちょうど開演15分前。もう3回目なので物語の内容をレポートするよりも、気になったことを簡潔に書いていこうと思う。

『第一幕』

♪じゃ、じゃーー〜ん、じゃ、じゃじゃじゃじゃじゃーーん

もう3回目なのに、やはりこのテーマが始まるとときめいてしまう。
今回の席はB席、2階でステージを右手に見る方、つまり左側に座ったわけで、前回、前々回とも違う席に座ることができたわけ、当然音響が違う。またまた変な音響。
帝国劇場というのは席によって全く違った響きがするみたい。今回の席は思いっきりデッドな響き。真ん中で聞いたときよりも音のバランスが偏って聞こえるので不思議。オーボエがガリガリ聞こえる。
まあ、バランスはいいとして、なんだ今日のオケは・・・音程バラバラ。うーんちょっとよくない。始まったばかりだからもうちょっとたてば安定するかもしれない。

「やつをここへ呼べ24653!!!」

鈴木綜馬さん登場。なんというかっこいい声だろう。のどの奥で2回3回と共鳴している感じの響き具合。しかも、はっきりした発音とリズムなので心地よい。例えるのは難しいが、あえていうならばちょっと古いアメリカの軍隊映画にでている将校という感じ。つまりぴったり。さわやかジャベールだな。いやらしさがまだみえてこないのでどのようなジャベールを演じてくれるのかすごく楽しみ。
バルジャンは鹿賀さん。相変わらず、歌い方が特徴的で、くどい。でも、それがくせになるかんじ。しかも今日は食器を盗むときにうっへっへと、笑っていたので(前回もやっていたのかもしれないが忘れてしまっていたようだ)その姿がとても印象に残った。

そして、司教様登場なのだが、今日の司教様は林アキラさん。

「あなたの魂、ぅわたしぃーがかーぁった〜〜」

すっごい迫力だった。あんなにりきんで説く場面なのだろうかとちょっと思ったのだが、そんなのはどうでもいいと思うくらいすばらしい歌声。聞くところによると林さんはカンパニーの歌の先生でもあるらしい。なるほど、すごいはずだ。

工場の場面、

「なにをすましてこのおじょーさん!」

とファンテーヌをからかう役があるが(なんという役なのかは知らない、人が多すぎてわからないのだ・・・)その役の人が結構お気に入りな歌い方だった。いやらしさがでてはいるのだが、鼻につく直前の演技、歌で気分が良かった。あと、工場長?

「このすべた、でていけ!」

の人。これまたいい感じ。「でていけえ!!!」と強くいうのではなく、軽く「でていけ」と見下した言い方。おお、これだと、感動してしまった。
今日の演出はなんか自分の感性にとても合っている感じ。楽しい。

そして、ほのかさんの登場。夢やぶれて。

やられた。

やっぱりすごい、鈴木ほのかさん。歌声はかわいいし、演技は最高。工場を首になってエプロンをはずしながら(エプロンなのかどうかわからないけど、とにかく何かをはずしながら)後ろを向いてモノローグ風につぶやくところから背中が何かをもうすでに語っていたわけで、そこからファンテーヌの悲哀が漂うという・・・
床に伏しながら歌ったり、その後次第に体を起こしながら歌ったり、何気ない仕草がすべて訴えかけてくる。
あまりこのような演技になれていない自分はそれだけで感動。やはりミュージカルには演技が必要だと改めて思った。

ラブリィ・レイディでtohkoさんを発見できた。なるほど、あんな所にいたのかと関心。やっぱり3回目になると細かいところまで見ることができるのでいい。

再び綜馬ジャベール登場。

「はなしをきこうかだれがどしーたかー」

楽譜で書くことができればいいのだが、無理なので言葉で説明するが、鈴木ジャベールは16分音符で歌が構成されている・・・いみわかんないな、それじゃ・・・
つまり、すごくさわやかに歌うわけで、全然いやらしくない。さらに声が美しすぎるために僕がイメージするジャベール(原作を読んだ訳じゃないのであくまでも想像なのだが)ではない。
いや、だめだというわけではないわけで、こういうジャベールもいいのかなと思うのだが、やはりジャベールはもっとねちっこい感じでいて欲しいと思ったわけ。でも「星よ」が楽しみ。あの美しい声だとすばらしいのではないかと。

「からかわないでよ〜」

鈴木ファンテーヌ、やはりぐっとくる。うーん、こんなに演技というのは意味があったのかと改めて実感。
それはファンテーヌの死の場面でさらに思い知らされた。
我が子コゼットの幻覚を見ながらその幻覚に近づこうと手を伸ばすファンテーヌ(こういう解釈でいいのだろうか?)ベットに手をつきながら歩くが端に来てしまい、ベットからずり落ちてしまう。岩崎ファンテーヌにはこのような小技はなかった。あのずり落ちてしまうという演技を見て、涙腺がゆるんでしまった。歌ではなく演技に泣くのは最近あまりなかったので新鮮な気持ちだった。ヴァルジャンに抱かれながら幸せな顔をして天に召されるファンテーヌ。どうしようもなく涙が出てしまっていた。

そして、ジャベールが割り込む訳なのだが、やはりいやらしさが足りない。。。
うーん、ちょっとジャベールのイメージを自分の中で作りすぎてしまったのだろうか。いまいちしっくりこない鈴木ジャベール。声質的には自分のお気に入りではあるのだが、ジャベールとしての憎らしさがでてこない。鈴木さんはヴァルジャンをやってもよかったのではないかとちょっと思ってしまった。あの声で「彼を帰して」とか歌ってくれたらいいだろうな、なんて。。。

今日のテナルディエは徳井さん、マダムは大浦さん。今日気になったことといえば、徳井さんが音をとれなかったみたいな所があったこと。マダムとの2重唱のところでマダムと同じ音を歌っていた気がする。「そーれに、だーんな、うたがってなんーだが」ってところ。小学生の合唱じゃないんだから・・・・

そう、リトルコゼットを忘れてた。今日のコゼットは石川楓ちゃん。
今日はどうも演技にばかり目がいってしまったのでこの子もよく見ていたわけなんだけど、ホント演技が細かい。さすが。
ヴァルジャンに森の中で発見されたときの表情。私の子だーといわれたときの笑顔。二階席にいたのによく見えた。
全く、歌ばかりに気を取られていた自分が恥ずかしい。ミュージカルというのはコンサートと違って演技もあるのだとホントに思った。

さて、綜馬ジャベール、星よ(Stars)美しかった。すばらしかった。でも、なんというか、堅い決意がくみ取れないというか、ヴァルジャンを憎む?心があまり見えなかった。村井、川崎ジャベールではでてきていた憎々しさがない。美しすぎる声がそれを忘れさせてしまうのだろうか。もう一度聞く機会があればと思ったのだが、鈴木綜馬ジャベールの日はもうすべて売り切れでもう聞くことができない模様。もう一度聞ければもう少し違う感想がもてるとは思うのだが。来年もやってもらえることを祈る。

今日は今アンジョルラス、津田マリウス、島田エポニーヌ、tohkoコゼットという組み合わせ。さすがに3度目ともなると見る点が変わってくる。
エポニーヌがマリウスをコゼットの屋敷につれてきたときにエポニーヌに駆け寄って「僕は飛ぶよ虹の空へ」なんてひどいこと(エポニーヌにとってだが・・・)をいうときにどんな駆け寄り方をするかとか、細かいところを見るようになってしまっていたわけ。津田マリウスはすべてがなんだか優しい。エポニーヌにとってはやさし「すぎる」感じがして見ていてつらい。ちょっとは本気ではないという点を見せて欲しい。(戸井、石井マリウスだと「その髪好きだわ」のとき、ちょっと冷たいのだが、マリウスは笑ってかわすという・・・)
tohkoコゼット、やはり声質がすき。ポップスの時とは違う歌い方なので最初違和感があったのだけれども、のびやかに、ストレスなく聞こえてくるすんだ歌声が好き。でも、今日の演技重視の見方ではやはり足りないと思う場面が多かった。喜怒哀楽が薄く見えてしまう。でもやっぱり好きなんだよね、tohkoコゼット・・・ファン馬鹿か。
abcカフェの場面。今アンジョルラスと津田マリウスのからみ。津田マリウスがホント優しいマリウスなので、今アンジョが勇ましく見えていい感じ。岡アンジョよりも力強い感じ。民衆の歌での動きなど、リーダーの風格漂う演技だし。いやぁ、かっこいいですな。

そして、1幕のクライマックス、One Day More.やっぱりこの曲大好き。
なにが好きかって、突然出現するアンジョルラスがいい。ヴァルジャンの「あしたーはー」がいい。ジャベールの「あしたはかくめい〜つぼみのうちに〜」が好き。っていうか、全部好き。
でも、一番好きなのはエポニーヌ。全員で大合唱になったときの「きょうもひーとぉりぃよー」が大好き。前回、前々回とあまりよく聞こえなかったのでがっかりだったのだけれども、今日はよく聞こえたので大感激。あの行進もたまらなく好き。一歩前にでて一歩下がって(笑)高校の時にやったマーチングをどうしても思い出してしまう。あーなつかしい(あのときはミス・サイゴンのドラゴンダンス?だったのだが)

そんなわけで1幕は終わり、怒濤の2幕に入って行くわけである。

『第二幕』

今アンジョルラスやっぱりかっこいいね。リーダー!!!って感じ。で、そこに「おれにはわかる〜」ってジャベールが入ってくるのだけれども、こういうときの綜馬ジャベールは合っている気がした。偽りの正義?うーん、複雑な気分だ。

それにしてもエポニーヌ、あわれ。マリウスの近くにいたいというだけで男の格好までして(マリウスにあったときにコートをがばっと開けるのがなんか好きなんだな。なんでだろう・・・)がんばっているのにそのマリウスにいいように使われて(いや、使っているという訳ではないんだろうが、ただ純粋なだけなんだろう)でも、ぜんぜん恨まないし、あのテナルディエの娘なのになんていいこなんだ!と思ってしまう。もう、こんなことばかり考えているから、バリケードに帰ってきた時点でもう泣いてしまうんだな。
いや、違うな、そのまえに「On My Own」で泣かされてるから、その余韻が残っているのかも。

島田エポニーヌは今日で見納めということもあってホント、複雑な心境だった。もうこれで見ることができないと思うとそれだけでなんか泣けてきた。で、あの歌、あの演技。泣くなという方が無理。
真っ暗な中、遠くに窓の明かり、そして、スポットライトを浴びたエポニーヌ。マリウスを思うが振り向いてくれない、でも愛してる。。。愛してるけど一人。。。

バリケードに政府軍からの宣告。「警告は嘘だ〜」アンジョルラスがみんなを必死に奮い立たせようとしている。ジャベールが嘘の情報を流し、それに気づいたガブローシュがジャベールを見抜き捕まえる、で、傷だらけのエポニーヌ登場。
もうこの情景を思い出しながら書いているだけでせつなくなってくる。この場面はあと100回見てもきっと同じように泣くだろうなと思う。乾杯しながらつれて行かれるエポニーヌに走り寄ろうとするマリウスをぐっと捕まえるアンジョルラス。はぁぁぁぁ(;_;)
バリケードの場面、見るたびに学生への思い入れが増してくる。ガブローシュがやられた後なんてもう冷静ではいられない。前回はグランテールに注目していたが今回は全体をくまなくよく見ていた。細かい演技が目に入り、そして目に入らなくなった。つまり涙でゆがみ見えなくなってしまったわけで・・・

そして、気づいたらアンジョルラスはぶら下がっている・・・
あのときの拍手はいったいなんなんだろう。死んだ姿に拍手するのはどうも納得がいかない。たしかにかっこいいさ、しびれるさ。でも、わからない。あの、全員死んでしまって悲痛な気分いっぱいの時に拍手?水を差すっていうんじゃないか、あういうのは。もうちょっとそっと見送ってあげようよと思うのは僕だけだろうか。

さて、問題のさわやかジャベールだが、さすがにヴァルジャンを逃がした後の苦悩はすごかった。例の橋の上での場面である。川崎ジャベールよりも控えめに始まったのでこんなもんかと思ってしまったのだが、それは間違いであるとすぐに気づいた。あぁ、なるほど、人気がある理由が今わかった。どのジャベールよりも悩み、苦しみ、もうどうしようもなくなって、飛び込むしかなかったのだ!!!!っていう感じ。今までのさわやか路線はここのための伏線であったのではないかと思えるくらいすばらしい自殺(!?)だった。あーやっぱりもう一日見ることができるようなチケットをとっておくんだった、今更だけどかなり後悔・・・

津田マリウスの苦悩もびしびし来た。「言葉にならない痛みと悲しみ」自分が生き残ってしまったというどうしようもない現実に悩まされ、苦しむマリウス。でも、ちょっと欲を言えば戸井マリウスのようにもうすこしオーバーな演技でもよかった。二階席にいたので薄い演技にみえただけなのかもしれないが・・・(戸井マリウスは一階席でみた)
その傷ついたマリウスを優しく包み込む・・・はずのコゼット。うーん、、、安達コゼットの方がこの場面はやっぱり好きだな。マリウスを思って思って思って思ってます〜っていう光線がtohkoコゼットには感じられない。歌はきれい、感じもでてる。でも、好きです、強くなって!光線が弱かった。もちろん、そんな光線、でやしないが(^_^;)

結婚式も滞りなく終わり、感動のラストシーン。

感動?どこへ行ったって感じ。やばい、ここで泣くために見に来てるのに。
鹿賀バルジャン、なんか暑苦しい。。。。なぜだ、なぜそう感じてしまうのだ!って思うんだけど、そう感じてしまった自分の気持ちは抑えられない。徹夜明けで神経が麻痺してしまったんだろうか。
今日はフレーズの「溜め」が妙に多かったからだろうか。どうも入り込むことができない。
ファンテーヌが登場して、「支度はできた」とバルジャンが言うシーン。「パパ、パパ!どうしてなの」と、コゼットが駆け寄るシーン。いつもなら涙腺最大解放!!!なわけなのだが。

泣けない・・・

「いきてパパ、いきるの、わかれはーはやすぎるわ」

コゼットがこう言うだけで(「パパ」という台詞が自体が「つぼ」)いつもならば嗚咽まで漏らしかねない状況になるのに今日は妙に冷めている。
こんな日もあるさとあきらめたとき、1日目、初めてみた日に隣に座っていた全く泣かなかった人を思いだした。

そうか、そうなのか・・・・

いつかこういう日が来るのではないかとは思っていて予想はしていたのだが、現実にきてしまうとかなりさみしい。
つまり、何度も見ることによって少し刺激が足らなくなってしまったようなのだ。
何で泣かないんだと疑問に思っていた自分であったけど、いざ泣かない自分を体験してしまうと妙に納得してしまったわけ。
今日はソワレも見るのにこんな状況で大丈夫なんだろうかと思いながら舞台上では大団円を迎えていた。
カーテンコールもなくなんか寂しい終わり方。やっぱり大泣きして終わりたい。

鈴木綜馬ジャベール、それにしてもすごかった。人気がでる理由がわかる。美声を武器にさわやかジャベールを演じていたと思ったらいつの間にか仕事に、正義に忠実な警察官ジャベールになっていていろいろな苦悩をぶちまけるというまさにジャベール像そのものを演じていた。他の村井、川崎ジャベールにはない、魅力なのではないかと思う。
そして、鈴木ほのかファンテーヌ、演技の威力に魅了された。二階席で、しかもオペラグラス無しで見ていたのにも関わらずにじみでるあの魅力。ミス・サイゴンのエレン、やっぱり見ておくんだったとまたまた後悔。すばらしい人だと思った。

さて、今日はこのあとにもう一度見ることができる。あまり感動することなく(もちろん、部分部分では泣きまくったのだが)終わってしまったマチネ。そのもやもや感を解消できるか。

ソワレの目玉は、まだ見たことがない堀内コゼット、斎藤テナルディエ、そして、鈴木輝美ガブローシュ。演技に定評のある堀内さんがどんな演技をしてくれるのか、女の子のガブローシュがどんな演技なのか非常に楽しみである。
始まるまで休憩としよう。